はじめに:複雑な形状こそ、私たちの得意分野です
「こんな複雑な形状、どこに頼めばいいんだろう」 「試作品だから少量なんだけど、受けてもらえるかな」 「納期が厳しくて、他の業者に断られてしまった」
このようなお悩みを抱えたお客様が、愛知県春日井市にある私たち榊原工機の扉を叩いてくださいます。
現代のものづくりでは、製品の高性能化や小型化が進み、部品に求められる形状もどんどん複雑になっています。手のひらサイズの小物部品でありながら、極めて高い精度や複数の加工工程が必要な部品も珍しくありません。
私たち榊原工機は、「機械部品加工の駆け込み寺」として、特に少量・試作の案件を得意としています。お客様のご依頼にベストパフォーマンスで応えるため、私たちは「クリエイティブにものづくり」を心がけています。複雑な形状の部品製作こそ、まさに私たちの「腕の見せ所」なのです。
この記事では、榊原工機がどのように複雑な部品加工を成功に導いているのか、その技術力と柔軟な思考プロセスについて、詳しくご紹介します。
第1章:幅広い素材と加工技術で、どんな形状にも対応
素材の制約を受けない柔軟性
複雑な形状の部品を実現するには、まず素材選びから自由度が必要です。私たち榊原工機では、「金属も樹脂もご相談ください」という方針のもと、幅広い素材に対応しています。
例えば、試作開発の段階では「この部品、本当はステンレスで作りたいけど、まずはアルミで試してみたい」というご要望も多くあります。また、「樹脂で軽量化したいけど、強度は確保したい」といった相反する要求にも、素材選びの段階からアドバイスさせていただきます。
特に加工が難しいとされる焼入れ鋼への追加工についても、これまでの経験をもとにリアルな事情をお伝えし、可能な限り対応しています。素材の制約で設計を妥協する必要がないことが、複雑な形状実現への第一歩です。
旋盤、マシニング、ワイヤー加工の組み合わせ
私たちが特に得意としているのは、旋盤、マシニング、ワイヤー加工という3つの技術です。これらを適切に組み合わせることで、切削、穴あけ、精密な切断といった多様な加工要求に応えることができます。
旋盤は回転する材料を削る加工法で、円筒形の部品製作に適しています。マシニングセンタは、固定した材料を様々な角度から削ることができ、複雑な立体形状の加工に威力を発揮します。そしてワイヤーカット加工は、極めて細い金属線で材料を切断する技術で、硬度の高い材料でも微細で複雑な形状を正確に切り出すことが可能です。
これら3つの技術を状況に応じて使い分け、時には組み合わせることで、手のひらサイズの部品であれば、ほぼどんな形状でも加工できる体制を整えています。
最新設備が可能にする複雑形状加工
複雑な形状を高精度に仕上げるためには、最新の設備が欠かせません。私たちが特に力を入れているのが、5軸加工機と複合加工機です。
5軸加工機は、工具と材料を5方向に同時に動かすことができる高度な機械です。通常の3軸加工機では何度も材料を付け替えなければならない複雑な曲面も、5軸加工機なら一度のセッティングで仕上げることができます。これにより、工程間の誤差を最小限に抑え、より高い精度を実現できます。
複合加工機は、旋盤加工とマシニング加工を一台でこなせる優れものです。例えば、円筒形の基本形状を旋盤で削り出した後、同じ機械でそのまま側面に複雑な穴やポケット加工を施すことができます。機械間の移動が不要なため、加工時間の短縮と精度向上の両方を実現できます。
実は、私たちはこの5軸加工技術を使って、自社製品である高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」を開発しました。複雑なパターヘッドのフォルムや、精密な重量バランスを実現したこの製品は、私たちの技術力を証明する自信作です。一般の工業部品だけでなく、こうした製品開発にも技術を活かしています。
第2章:「旋盤のように高速回転する頭脳」で最適解を導く
瞬時に最適な加工ルートを設計する
複雑な部品の製作依頼をいただいたとき、私たちエンジニアの頭の中では、猛スピードで様々な判断が行われています。それはまるで、旋盤が高速回転するように、ベストな加工法を考え続けているのです。
具体的には、このような思考プロセスを経ています。
まず、材料形態の決定です。「この形状なら、角材から削るべきか、それとも丸棒から削るべきか」という基本的な判断から始まります。材料の選び方一つで、加工時間や精度、コストが大きく変わってきます。
次に、機械の選定と工程設計です。「5軸加工機か複合加工機を使えば、穴加工まで一台で完結できる。でも、今日は両方とも他の仕事で埋まっている」このような状況は日常茶飯事です。
そこで、危機回避と代替案の実行に移ります。「特急案件だから、すぐに動かせるマシニングと旋盤で工程を組もう」という柔軟な発想が必要になります。
最後に、最適化です。「どの順番で削るのがベストだろうか」「固定治具はどう設計するか」「プログラムはこれまでのどの事例が参考になるか」こうした細かい判断の積み重ねが、複雑な部品を高精度に仕上げる鍵となります。
部品の形状が複雑になればなるほど、考慮すべき要因は増えていきます。設備の稼働状況、納期の緊急性、材料の特性、加工の難易度、コストバランスなど、多角的な視点から最も効率的かつ高精度な加工ルートを設計する。これこそが、私たちが長年の少量・試作対応で培ってきた経験の賜物です。
多能工エンジニアだからこそできること
私たち榊原工機のエンジニアは、特定の機械だけを専門とするのではなく、複数の加工技術を扱える「多能工」として育成されています。
一人のエンジニアが旋盤もマシニングも5軸加工機も扱えるということは、一つの部品を最初から最後まで責任を持って製作できるということです。これにより、工程間の引き継ぎミスがなくなり、全体を見通した最適な加工計画が立てられます。
また、ある機械が埋まっているときに別の機械で代替できるという柔軟性も、多能工だからこそ実現できることです。特急案件への対応力は、この多能工システムによって支えられています。
「駆け込み寺」として培った経験値
「納期まであと3日しかないんです」 「図面を見てもらったら、他の業者に断られてしまって」 「どこに相談すればいいか分からなくて」
こうしたご相談を、私たちは日々いただいています。「機械部品加工の駆け込み寺」と呼ばれる所以です。
お客様からよく言われるのが、「加工に困った。納期に困った。いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多い」という言葉です。これは、私たちにとって最高の褒め言葉であり、同時に大きな責任でもあります。
特急案件に対応する際、私たちがお客様にお勧めしているのが、メールではなく電話でのご相談です。複雑な案件ほど、書面だけでは伝わりにくい細かいニュアンスがあります。お電話で直接事情を伺うことで、より適切な提案ができ、結果的に納期短縮にもつながります。
「急ぎで部品加工を発注するときは、まず電話してください」これが、私たちからのアドバイスです。
第3章:透明性の高い対応で、安心してご発注いただける関係づくり
品質認識のギャップを解消する
複雑な形状の部品、特に公差が厳しい部品では、発注者様と私たち加工業者の間で「品質認識のギャップ」が生じることがあります。
例えば、図面に「±0.05mm」と書かれていても、その精度がどの部分に必要で、どの部分は多少の余裕があるのか。こうした情報を事前に共有できれば、より効率的で確実な加工が可能になります。
私たちは、こうした品質認識のギャップを解消するために、お客様とのコミュニケーションを大切にしています。図面を受け取った段階で、疑問点があれば必ず確認させていただきます。時には「この部分の公差は、もう少し緩くても機能上問題ないのではないですか」といった提案もさせていただきます。
これは、コストや納期を削減するためでもありますが、何より「お客様が本当に必要としている品質」を正確に理解し、それを実現したいという思いからです。
見積もりの透明性を大切に
「なぜこの部品の加工費がこの金額になるのか」 「もう少しコストを抑える方法はないのか」
こうした疑問は当然のことです。私たちは、見積もりの内訳をできる限り明確にお伝えするよう心がけています。
材料費はいくらか、加工時間はどれくらいかかるか、特殊な治具が必要な場合はその費用も含めて、透明性の高い見積もりを提示します。複雑な形状の加工では、標準的な部品に比べてどうしても費用がかかることがありますが、その理由を丁寧に説明することで、お客様に納得していただける関係を築いています。
また、コスト削減のご相談にも積極的に応じています。形状を少し変更することで加工時間を短縮できる場合や、材料のサイズを調整することで材料費を抑えられる場合など、様々な提案をさせていただきます。
現場のリアルな情報も包み隠さず
加工現場では、機械トラブルや加工不良は避けられないこともあります。最先端の5軸加工機や複合加工機を使っていても、予期せぬ問題が発生することはあります。
私たちは、こうした現場のリアルな情報も、お客様や業界の皆様と共有しています。トラブル事例とその対応策を公開することで、同じような問題に直面した方々の参考になればという思いからです。
また、国際調達のリスクについても、現場で見聞きした実態をお伝えしています。海外での部品調達には様々なメリットがありますが、同時にトラブルも少なくありません。私たちは国内で一社完結体制を整えることで、こうしたリスクを回避し、確実な品質と納期をお約束できると考えています。
第4章:「あたたかい町工場」が育むクリエイティブな発想
工場らしくない、居心地の良い空間
私たち榊原工機の工場を初めて訪れるお客様は、よく驚かれます。「本当にここが工場なんですか」と。
実は、私たちの工場は「工場っぽくない外観」が自慢なのです。ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた、一見すると工場には見えない建物です。
1階では金属を削る音が響いていますが、2階の事務所に上がると、そこは木の温もりを感じる空間が広がっています。窓からは緑が見え、リラックスして仕事ができる環境を整えています。
なぜこのような空間づくりにこだわっているのか。それは、複雑な形状や特急案件に対応するためには、エンジニアが常に高い集中力と柔軟な発想を維持する必要があるからです。
プレッシャーの中でも冷静に、そして創造的に問題を解決する。そのためには、心地よい環境が欠かせません。「あたたかい町工場」という雰囲気が、私たちの創造性を支えているのです。
外部のクリエイターとの協働
私たちは自社製品のSAKAKI PUTTERを開発しているだけでなく、外部のガレージブランドや個人ブランドの試作開発も積極的に支援しています。
「こんなアイデアがあるんだけど、形にできるだろうか」 「デザインは決まっているけど、どう加工すればいいか分からない」
こうしたご相談をいただくことも多くあります。個人のクリエイターの方が持つ、複雑で個性的なアイデアを、私たちの技術力で具現化するお手伝いをしています。
例えば、SAKAKI PUTTERのような製品開発では、デザイン性と機能性の両立が求められます。見た目が美しいだけでなく、ゴルフパターとして最適な重量バランスや打感を実現しなければなりません。こうした複雑な要求に応えられるのは、削り出しという高精度な加工法と、長年の経験に基づく技術力があるからこそです。
クリエイターの皆様が「こんな複雑な形状を実現したい」と夢を語ってくださるとき、私たちはその夢を形にする喜びを感じます。それこそが、私たちにとっての「腕の見せ所」なのです。
結論:複雑さを歓迎する、榊原工機の総合力
私たち榊原工機は、複雑な形状の部品加工において、ただ優れた機械を持っているだけではありません。それを使いこなす「考えて動く多能工のエンジニア」の知恵と、柔軟な対応力こそが、真の「腕の見せ所」だと考えています。
5軸加工機や複合加工機、ワイヤーカット、旋盤、マシニングといった多様な技術を総合的に活用し、金属も樹脂も、さらには焼入れ鋼にも対応できる専門性。
少量・試作にトコトン強く、特急案件でも複雑な工程を瞬時に組み替える経験値。
SAKAKI PUTTERの開発実績や、品質認識のギャップ解消に向けた情報発信を通じて示してきた、業界における信頼性。
加工や納期に困ったときに一社で解決できる総合力と、透明性の高い見積もり、そしてお客様に寄り添うコミュニケーション。
これらすべてが、「あたたかい町工場」というクリエイティブな環境の中で育まれ、日々、複雑な課題の解決へとつながっています。
もしあなたが、他の業者に断られた複雑な部品の加工や、難解な試作開発に直面しているのであれば、ぜひ私たち榊原工機にご相談ください。「機械部品加工の駆け込み寺」として、全力でサポートさせていただきます。
まずはお気軽にお電話ください。お客様の「困った」を「できた」に変える、それが私たちの使命です。